紙が透明になる理由
私達が日常使用している「白い紙」は、木材から非セルロース成分を取り除いた幅15-50μmのパルプ繊維からつ くられる。パルプ繊維と水の懸濁液を乾かすと、パルプ繊維が絡まりあい、そして繊維表面の水酸基によって繊維同士が強固に水素 結合する。その結果、接着剤などを使用しなくても、フィルム状に紙が形作られる。そして、紙が白く見える理由は、紙の内部にある空隙が関係している。幅15-50umのパルプ繊維同士が凝集すると、繊維間に数ミクロンオーダーの隙 間が残るため(下図右上)、この空隙が太陽光を散乱し、紙は「白く」見える(下図右下)。
幅4-15nmのセルロー スナノファイバー水懸濁液を乾燥させると、パルプ繊維と同じように、ナノファイバー同士が絡まりあい、水酸基によって繊維同士が結合され、フィルム状に形作られる。このように、水懸濁液が乾いていくプロセスは、太い繊維(パルプ繊維)も細い繊維(セルロースナノファイバー)も全く一緒である。しかし、セルロースナノファイバーは直径が非常に細く・比表面積が膨大であるため、パルプ繊維と比べて変形しやすく、単位面積あたりの水素結合の数が圧倒的に多い。その結果、ナノペーパーでは繊維同士の隙間が確認できないほど小さくなり(下図左上)、太陽 光を乱反射することなく高い透明性を示す(下図左下)。
なお、このナノペーパーはプラスチックなど異種材料を一切添加しておらず、セルロースナノファイバーだけでできた透明材料である。
図 透明な紙(左)と白い紙(右)
© Department of Functionalized Natural Materials ISIR, Osaka University