フレキシブル高誘電率ナノペーパー
あらゆるモノをインターネットに接続させるトリリオンセンサの実現には、アンテナやトランジスタなど電子デバイス部品の小型化や低消費電力化が重要である。誘電率が高い絶縁性基板は、トランジスタ・コンデンサなどデバイス部品の小型化・薄膜化において重要な電子部品であり、さらにリーク電流を大幅に削減することが可能であるため電子デバイスの消費電力を小さくできる。そこで、私達はナノペーパーを用いて、高誘電率材料の開発に取り組んだ。
セルロースは誘電率の大きな材料である。しかし、紙は内部に無数の空隙が存在しているため、紙の誘電率は3程度である。パルプ繊維を微細化(ナノフィブリル化)して高密度な紙(ナノペーパー)を作製すると、その誘電率は5.3まで増加した。この値は、ポリイミドやPETフィルムといったエンジニアプラスチック(k=2~4)よりも優れているが、ポリフッ化ビニリデン(k=8~9)など高誘電率ポリマーより小さい。また、高誘電率フィラーとして知られているチタン酸バリウムを、ナノペーパーへ大量に添加しても(添加率21vol%)、誘電率は8.1であった。
最新の研究成果によると、金属ナノ粒子などの高導電性フィラーを少量添加すると、パーコレーションメカニズムに基づき比誘電率が大幅に増加されることが明らかになりつつある。そこで、ナノペーパーに銀ナノワイヤをわずか2.5vol%加えると、この材料の誘電率は727@1.1 GHzと圧倒的に高い値を示した。さらに、添加量が非常に少ないため、銀ナノワイヤ複合ナノペーパーははさみで切ることもでき、折り紙のように折り畳むことも可能である。さらに、この銀ナノワイヤ複合ナノペーパーを基板としてア ンテナデバイスを作製すると、基板の誘電率が高いためアンテナ配線が半分の長さになり、デバイスを小型化できた。このように、銀ナノワイヤならびにセ ルロースナノファイバー材料は、新たな高誘電率絶縁材料として、これからのデバイス部品のキーマテリアルとなる。
T. Inui et al. Advanced Materials (2014) DOI: 10.1002/adma.201404555
© Department of Functionalized Natural Materials ISIR, Osaka University