透過率・ヘイズ
透明な媒体に光が入射する際、空気との屈折率差に応じて表面反射(フレネル反射)が生じる。したがって、理想的な透明物体においても表面反射による透過率ロスが生じ、その全光線透過率は100%に至らない(例えばガラスの全光線透過率は90%程度である)。全光線透過率の理論値は、透明材料の屈折率と空気の屈折率(1.0)から算出される。セルロースの屈折率を1.58とすると、フレネル反射は5.1%であり(式1)、多重フレネル反射を考慮したナノペーパーの全光線透過率理論値は90.1%となる(式2)である*。さて、我々が作製したセルロースナノペーパーは、可視光領域において全光線透過率90.1%を達成しており、シート内部で全く光吸収していない極めて透明な材料である。
R = (n-m)^2/(n+m)^2 (1)
T(%) = (1-R)^2*100 (2)
(R:表面反射、T:多重表面反射を考慮した理論全光線透過率(%)、n:透明媒体の屈折率、m:空気の屈折率)
光吸収しない透明な物体も、光散乱によって透明性が低くなる。その光散乱は、全光線透過率における拡散透過率の割合“ヘイズ”という指標で評価される。白濁した透明材料ほどヘイズは大きく、市販PETフィルムはヘイズ4%程度であり、ガラスはヘイズ0%である。そして、透明ナノペーパーにおいては、ヘイズ1%以下が達成されている。
*一部の文献において、全光線透過率95%近くのナノセルロース透明フィルムが報告されている。ちなみに、全光線透過率95%という値は、屈折率1.3付近の材料なら達成可能であり、私の知る限りセルロース系材料(誘導体含む)の屈折率は1.4~1.6程度である。
© Department of Functionalized Natural Materials ISIR, Osaka University