カーボンナノチューブ・セルロースナノファイバーインク
大阪大学 古賀・東京大学 磯貝らは、カーボンナノチューブ(CNT)とTEMPO酸化処理セルロースナノファイバーの複合化インクを開発した。
CNTは、高電流密度耐性・高機械強度・大比表面積等の優れた物性を持つため、バッテリー・キャパシタ電極、透明導電膜、補強用フィラー、センサー等、様々な応用展開が進んでいる。しかし、扱いにくく凝集しやすいのが大きな欠点である。そこで、CNTとセルロースナノファイバーの複合化を行った。まず、CNTとセルロースナノファイバーを混合し、水中で超音波処理を行った。その後、遠心分離して上澄み液を回収し、共分散液とした。このコンポジット水分散液は、塗布して乾燥するだけで様々な基板材料に導電性を付与できる。すわなち、印刷プロセスで電子デバイスをつくるプリンテッド・エレクトロニクスへの応用が期待できる(図13)。例えば、PETフィルムにキャストして乾燥させると、可視光透過率約70%(PET基板込み)・シート抵抗約1.2 kΩ/□のフレキシブル透明導電フィルムが得られた。このとき、セルロースナノファイバー未添加の場合、乾燥後にCNTの凝集が避けられず、シート抵抗が上昇した。このことから、セルロースナノファイバーがCNTの分散剤として機能することが示された。また、その抵抗値は湿度応答的に変化することが確認され、湿度センサーとしての利用可能性も示された。紙にインクジェット印刷することもでき、電気配線を自在に描くことも可能であった。以上の結果より、CNTとセルロースナノファイバーのコンポジット材料は、プリンタブルな透明導電膜やセンサーとして応用可能である。
H. Koga*, T. Saito et al. Biomacromolecules (2013) DOI: 10.1021/bm400075f
© Department of Functionalized Natural Materials ISIR, Osaka University