最先端・次世代研究開発支援プログラム:NEXT
期間:平成23年2月10日~平成26年3月31日(2011年~2014年)
課題名:プリント技術によるバイオナノファイバーを用いた低環境負荷・低温エレクトロニクス製造技術の開発
助成額:168百万円
成果報告書はコチラ。(GS017)
背景
iPadの衝撃
2010 年春、アップル社から情報端末“iPad”が発売された。電子ブックはその登場以来、読みやすさ、持ち運びやすさ、省エネルギー性など様々な視点から、紙 との比較・議論が盛んに行われてきた。グーテンベルグの活版印刷技術の発明以来、紙の上に表示され続けてきた情報は、今後、ディスプレイの上に表示される ことになることは間違いない。
電子デバイスの次世代製造技術:プリンテッドエレクトロニクス
現在の電子書籍用端末は、ガ ラスなどの硬い基板の上に部品を搭載しているため、重く、曲げることができない。さらに、これら電子機器は、高温・真空処理など環境負荷の高いプロセスで 製造されており、私達の生活の潤いは地球環境への負荷と引き替えに成立しているのである。そ こで、加熱・真空プロセスなどが不要な省エネルギー技術:プリンテッド・エレクトロニクスが注目されている。この技術は、新聞や雑誌を刷るように、印刷に より大量に高速に電子部品や機器をポリマー基板の上に製造する技術であり、出来上がったデバイスは鞄に入れて持ち運びできる軽さとフレキシビリティを有す る。さらに、製造可能なデバイスは電子書籍用端末に限らず、太陽電池、有機EL照明、電子広告用ポスター、ヘルスケアセンサなど多岐にわたり、その大きさ も手のひらサイズからビルの壁面まで対応可能である。
目的
研究代表者は、地球上最も豊富なバイオマスであるセルロース ナノファイバーから「透明な21世紀の紙」の開発に成功している。そこで、この「透明な紙」とプリンテッド・エレクトロニクス技術を融合し、原料からプロ セスに至るまで低環境負荷技術を取りそろえて真の低炭素化社会の実現に取り組む。そして、プリント技術を用いてバイオナノシート基板上へ最先端電子部品を 搭載する技術を確立し、軽くてしなやかな電子デバイスの試作を最終ゴールとした。
主な研究成果
透明な紙、大幅な透明性の向上
透明な紙、その透明性を20-30%向上させました。DOI:10.1063/1.4804361
電気の流れる透明な紙
銀ナノワイヤやカーボンナノチューブを使い、「透明な紙」へ導電性を付与しました。(Nature Asia Materials、印刷中)
ペーパートランジスタ
NHK 放送技術研究所との共同実験において、透明な紙のうえに有機トランジスタを搭載しました。DOI: 10.1002/adfm.201303024
導電性ライン on ナノペーパー
ナノペーパーへ電気回路を印刷し、LEDライトの点灯に成功しました。DOI:10.1039/C3NR01951A
折り畳めるナノペーパーアンテナ
銀ナノワイヤインクとナノペーパーを用いて、折り畳めるアンテナと導電性配線を開発しました。DOI: 10.1039/c3nr00231d
インクジェット重ね塗り印刷によるアンテナの感度向上
銀塩インクで重ね塗り印刷し、市販無線LANアダプターのアンテナ感度を向上させました。DOI: 10.1021/am301747p
高感度な銀ナノワイヤ印刷アンテナ
開発した銀ナノワイヤ印刷アンテナは、既存の銅箔アンテナよりも高感度です。DOI: 10.1039/C2NR30485F
インクジェット印刷配線用基板改質処理の開発
ポリマー系コート層を開発し、高導電性インクジェット配線を実現しました。DOI 10.1039/C2RA21442C
撥水性多孔質コート層を開発し、高導電性インクジェット配線を実現しました。DOI: 10.1021/am300160s
インクジェット印刷配線の加熱方法
高導電性インクジェット配線を実現するために、印刷配線の加熱方法を開発しました。DOI:10.1088/0960-1317/22/3/035016
室温プレスによる銀ナノワイヤ透明導電膜
非加熱プロセスで、高透明性・高導電性な銀ナノワイヤ透明導電膜を開発しました。DOI: 10.1007/s12274-011-0172-3
7倍伸ばしても導通する伸縮性導体
銀フレークとポリウレタン混合ペーストを用い、7倍伸ばしても導通する電気配線材料を開発しました。DOI: 10.1016/j.compscitech.2011.05.006
© Department of Functionalized Natural Materials ISIR, Osaka University