Department of Functionalized Natural Materials, The Institute of Scientific and Industrial Research, Osaka University 大阪大学 産業科学研究所 第2研究分門 自然材料機能化研究分野

Department of Functionalized Natural Materials, The Institute of Scientific and Industrial Research, Osaka University 大阪大学 産業科学研究所 第2研究分門 自然材料機能化研究分野

電気の流れる透明な紙

銀ナノワイヤやカーボンナノチューブなど非常に細い導電性ナノマテリアルはインク濃度を低濃度に希釈して透明基板へ塗布すると、基板の透明性を保持したまま導電性を付与できる。このような透明かつ導電性を有する基板は透明導電膜と呼ばれる。透明導電膜は、金属酸化物とガラスを用いたITOガラスが既に実用化されており、タッチパネル・ディスプレイ・太陽電池など様々な電子デバイスに利用されている。しかしITOガラスは重く脆いため、次世代の軽量フレキシブルデバイスには適用不可能であり、軽量・フレキシブルな透明かつ電気の流れる基板材料の開発が急務となっている。そこで私達は、銀ナノワイヤやカーボンナノチューブなどの導電性ナノマテリアル水懸濁液を透明な紙で濾過して、電気の流れる透明な紙を作製した。

透明な紙を濾紙または透明なフレキシブル基板として利用すると、透明な紙のうえに均一なネットワーク構造が形成される。従来は、例えばPETフィルムのうえに銀ナノワイヤ懸濁液を塗布・乾燥して透明導電膜を作製する。このように作製した銀ナノワイヤ透明導電膜は、乾燥中に銀ナノワイヤが凝集して不均一な膜となる。一方、透明な紙で銀ナノワイヤを濾過すると、銀ナノワイヤ懸濁液がナノペーパーの微細な隙間から濾過・排水されるため、乾燥後にとても均一な膜となる。この均一なネットワーク構造のおかけで、銀ナノワイヤを濾過した透明な紙は透過率88%・シート抵抗12Ω/□を示し、この値はPETフィルムに銀ナノワイヤを塗布したものよりも75倍以上高い導電性であった。さらに導電性ナノマテリアルは、透明な紙の表面に埋め込まれているため、強い密着性を示した(図16)。したがって、この電気の流れる透明な紙は曲げやスクラッチにも強く、未来のペーパーエレクトロニクスにおいて重要な材料となると期待される。

H. Koga  et al., NPG Asia Materials, (2014) doi:10.1038/am.2014



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