ペーパートランジスタ
私達は、薄くて透明なナノペーパーを基板として、高移動度な有機薄膜ペーパートランジスタアレイの試作に世界で初めて成功した。
薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)は、主に液晶ディスプレイなどの画素スイッチとして用いられ、多結晶シリコンやアモルファスシリコンなどシリコン系半導体材料が主に使用されている。これらのシリコン系TFTは非常に高い性能を示すが、400~600℃での熱処理が必要であり、大面積・フレキシブルデバイスへの適用が非常に難しいといった課題がある。一方、有機TFTは、シリコン系TFTよりも柔らかく塗布による低温での製造プロセスが可能であり、そのため、大面積でフレキシブルなデバイスがより安価に作製可能になると期待されている。しかし、有機TFTの搭載プロセス温度はガラス基板を想定したものであり、現時点では、耐熱性の低いプラスチック基板へ適用することが難しい。したがって、プラスチックなどのフレキシブル基板へ搭載した有機TFTは、低温プロセスと引き替えにトランジスタ性能が低下することが多い。
天然木材セルロースナノファイバーからなるナノペーパーは、高耐熱性(180℃以上)・高耐薬品性・低熱膨張率(5-10ppm/K)といった優れた性能を有する。したがって、リソグラフィと溶液プロセスを組み合わせ、ショートチャンネル・ボトムコンタクトOTFTをナノペーパーへ搭載することが可能になった。さらに、ナノペーパーはその表面が非常に平滑であるため、ナノペーパーに溶液塗布した有機半導体薄膜は50-100umという非常に大きな結晶ドメインを形成した。その結果、試作したTFTは、大気雰囲気下で最大1cm2/Vsの高いホール移動度と0.1V以下の小さなヒステリシスを示した。
Y. Fujisaki, H. Koga, M. Nogi et al. Adv. Fun. Mater. (2013), DOI: 10.1002/adfm.201303024
© Department of Functionalized Natural Materials ISIR, Osaka University