記憶する紙
多くの電子デバイスは半導体メモリが実装されており、半導体メモリにおいても小型化・省エネ化が求められている。そのため、電源を切っても記憶を保持し続ける不揮発性メモリの開発が進んでおり、USBなどのフラッシュメモリが既に多くの電子デバイスに実装されている。一方で、フラッシュメモリはその構造が複雑であるため高密度化の限界が指摘されている。そこで、電圧の印加による電気抵抗の変化を利用した抵抗変化型メモリ(ReRAM、メモリスタ)が次世代の不揮発性メモリとして注目を集めている。電気抵抗変化記憶メモリは、その構造が「金属電極-絶縁層-金属電極」と非常に単純であり、ナノ秒で素早い読み書きが可能、消費電力が小さいなどの特徴がある。
このような状況において、電気抵抗変化記憶メモリは世界中で活発に研究開発が進められている。なかでも「柔軟な不揮発性メモリ」は、持ち運びしやすいフレキシブルエレクトロニクスの実現において必要な回路部品である。しかし、現在開発されている不揮発性メモリの多くは柔軟性に欠けており、例えば、麺棒や太鼓のバチなど直径数センチの棒へ巻き付けるとメモリ特性が著しく悪化する。そこで私達は、銀ナノ粒子をわずかに含んだセルロースナノペーパーを絶縁材料として、記憶する紙(不揮発性メモリ)を開発した。「記憶する紙」は、6桁のオンオフ抵抗比・小さなスイッチング電圧分布など非常に安定した不揮発性メモリ特性を示した。そして、直径1mm以下の細い棒へ巻き付けても、高いメモリ特性を保持した。
これまで私達は、紙のうえに情報を記録し、その紙を折り畳んでポケットに入れて持ち運んでいた。そしてこれからも、情報を「記憶する紙」へ記録し、折り畳んでポケットに入れて持ち運ぶことができる。
K. Nagashima et al. Scientific Reports (2014) 4, 5532, doi:10.1038/srep05532
© Department of Functionalized Natural Materials ISIR, Osaka University