透明な紙の機械的特性
セルロースは剛直な高結晶性ポリマーである。したがって、セロハンなどのセルロース系プラスチックは、汎用プラスチックよりも優れた機械的特性を示す。そしてナノペーパーは、セルロース系プラスチックよりも優れた機械的特性を示す。その理由は2つある。まず一つは、セルロースナノファイバー自身が、低熱膨張率(0.1 ppm/K, Nishono 2004)・高強度(2-3 GPa, Saito 2013)・高弾性(130-150 GPa, Iwamoto 2009)という機械的特性を有するからである。二つ目は、セルロースナノファイバーはナノペーパーにおいて緻密なネットワーク構造を形成しているからである。したがってナノペーパーは、弾性率13GPa・引張り強度223MPa・熱膨張率5-10ppm/Kと非常に優れた機械的特性を示す。セロハンなどのセルロース系プラスチックは、セルロース原料を溶融・成形して製造する。そのため、セルロースナノファイバーが消失しネットワーク構造が存在しないため、セルロース系プラスチックの機械的特性はナノペーパーよりも若干劣っている。
ナノペーパーは高い面内熱伝導率(Uetani 2013)と高い誘電率(5.3 at 1.1GHz、Inui 2014)を有することが明らかになった。多くのプラスチックフィルムは1W/mK以下の熱伝導率である。一方、木材由来のセルロースナノファイバーで作製したナノペーパーは1.1 W/mKの熱伝導率、ホヤ由来のセルロースナノファイバーで作製したものは2.5 W/mKの熱伝導率を有する。なお、誘電率に関しては、別ページにて詳述しています。
なお、TEMPO酸化処理によって得られた幅4nmのセルロースナノファイバーシートにおける機械的特性は、機械的解繊処理した透明ナノペーパーと概ね同じである。その性能は、FukuzumiやIsogaiらの論文・総説において詳細に紹介してある。比較例の一つとして、こちらの論文を参考にして下さい。
© Department of Functionalized Natural Materials ISIR, Osaka University